top of page

経済安全保障における技術流出対策とは(第6回)

  • 12 時間前
  • 読了時間: 2分

執筆者:稲村 悠


経済安全保障ガバナンス

 企業の技術流出対策の強化は、もはや特定の防衛関連企業に限られた課題ではない。

 AI、半導体、量子技術、バイオなどの先端技術や、個人・産業データを扱う企業にとっても不可欠な経営課題である。グローバルな競争や地政学リスクの高まりに伴い、技術流出は企業の存続を左右するだけでなく、国家安全保障や外交関係にも深刻な影響を及ぼす。すなわち、技術を守ることは企業の生存戦略であると同時に、日本全体の経済安全保障基盤を強固にする行為でもある。


経済安全保障

 

このような情勢下においては、経営層主導のもと、経済安全保障室などの専門組織を社内に設置し、司令塔として脅威評価、技術棚卸、アクセスログや海外拠点の挙動といったリスク情報を一元的に収集・分析・統合する体制の構築が不可欠である。こうした情報集約型の体制は、単なるマニュアル整備やシステム導入にとどまらず、組織のカウンター・インテリジェンス能力を高め、企業全体での優先度の高い対策の実施を可能とする。


 さらに、サプライチェーン全体に目を向けた安全保障対応も重要である。協力企業や海外子会社における情報管理ルールの明確化、セキュリティクリアランス制度の導入、アクセス権限の最小化といった内部統制の強化に加え、第三者監査や継続的な内部監査を組み合わせることで、社内では見えにくいリスクの洗い出しが可能となる。また、統合的リスク管理ツールの活用により、脆弱性の自動検知やアラート機能を通じて、経済安全保障室が担う情報分析の精度をさらに高めることができる。



待ちの姿勢を脱却せよ


 加えて、企業は“待ち”の姿勢を改め、自社が把握したリスク情報を官民連携の枠組みの中で能動的に共有し、国の助言を得ながら防御態勢を最適化する姿勢が求められている。国際情勢やサイバー攻撃手法が常に変化し続ける以上、対策を一度講じて終わりにするのではなく、経済安全保障室を中核に据えた「カウンター・インテリジェンス・サイクル」を継続的に回し、動的に防御体制を更新していく必要がある。

 このような包括的かつ実効性のあるガバナンス体制こそが、企業の技術流出リスクを最小限に抑え、技術優位性を保ちつつ世界に挑むための基盤となるのである。


 筆者は、日本企業にそれが出来ると信じてやまない。



最新記事

すべて表示
経済安全保障における技術流出対策とは(第5回)

世界レベルでの技術流出対策に共通する特徴は、情報管理や社員教育の徹底を基盤とした多層的かつ予防的な防御体制を構築している点にある。中でも注目されるのが、韓国のサムスンにおける取り組みである。同社は巨額の研究開発投資に並行し、機密情報の保護を重視して早くからアクセス管理体制や社内統

 
 
経済安全保障における技術流出対策とは(第4回)

より深刻な課題は、投資買収、不正調達、留学生・研究生の送り込み、共同研究・共同事業など、一見すると合法的な経済活動の形をとった技術流出だ。特に、通常取引における試作品の貸与、技術指導、工場見学などは、日常業務の一環であり、正当な理由付けがあるため、企業側の警戒心も緩みやすい。 

 
 
経済安全保障における技術流出対策とは(第3回)

技術流出対策を進めるうえで、しばしば見落とされがちなのが「人を介して起きるリスク」、すなわち人的脆弱性である。とりわけ、高度なアクセス権を有する研究者やエンジニアが、金銭的な困窮、不満、あるいは外部組織からの接触などを抱えたまま勤務を続けている場合、意図的・非意図的を問わず、企業

 
 
bottom of page