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経済安全保障の基礎知識(第1回)

  • 23 時間前
  • 読了時間: 3分

執筆者:藤谷 昌敏



 中国の台頭により米国による一国支配が退潮しつつある中、イスラム原理主義勢力によるテロリズムの発生や新型コロナウィルスCOVID-19のパンデミックなどを契機として、これまでの軍事偏重の安全保障論が多様化して新しい安全保障という概念が注目されるようになった。そのうちの一つが「経済安全保障」である。

 日本はエネルギーや戦略物資の産出がほぼゼロの資源小国であり、有数の経済大国となった今でもその脆弱性に変わりはない。経済安全保障は日本にとって特に重要な戦略といえるだろう。



1 経済安全保障とは

 経済安全保障は多義的であり、定義は様々であるが、ここでは同志社大学教授村山裕三氏が提唱する定義をとりたい。

「経済安全保障」は、国家の経済的側面の安定や発展を阻害する脅威に対して「対処」すること、あるいはそうした脅威を「抑止」すること、あるいは脅威をもたらす対象に対して強制的な手段を含めた働きかけを行うことを含む包括的な概念である。経済安全保障は、最先端技術の開発を進めて国益を高めること、経済援助を通じて他国の政策に影響を与えることなども含まれる。



2 日本の経済安全保障の3つのポイント

① サプライチェーンの安全保障

 日本の経済安全保障は日本国憲法の平和主義の影響を受け、防御的経済安全保障ともいわれる。その中でもサプライチェーンの安全保障は比重が大きい。

 グローバル企業は、世界各国から原料を仕入れて、付加価値を付けた商品を生産し、それを最も利益の上がる地域で販売する。このサプライチェーンが寸断されたら販売する商品もなくなり、国際競争力をつけた商品も他国が開発した物に取り換えられてしまう。COVID-19のパンデミックの際、中国の工場閉鎖でマスクなどの衛生用品が枯渇して日本の国民生活に影響が出たことや、中国のレアアースなどの重要金属の輸出停止を受け、自動車などの生産が停滞したことなどに対しても、輸入国を分散することや代替物の開発、都市鉱山などのリサイクルに努めることがサプライチェーンの安全保障である。


② 技術不拡散

 日本企業の技術力が他国よりも優位であることが、メードインジャパンの商品の国際競争力を高めていた。現在、多くの技術が中国などの覇権国に流出し、日本の技術の優位性がなくなっている。技術流出が続けば、日本の国益や国家的威信、経済力が失墜していくだけではなく、国民の生活に大きく障害が出るようになる。

 さらに大量破壊兵器や高度な通常兵器につながる技術が漏洩すると、単に日本だけの問題ではなく、世界の平和に重大な影響が出る。米国は、大学への中国からの資金提供を制限する法律や外国資本による企業買収、留学生制限なども行っており、日本も外国人による土地取得の規制や日本版CFIUSをつくり制限を強化する方針である。


③ 他国からの規制

 外国から経済制裁を受けて輸出入が制限されると国家経済に深刻な影響を与える。米中は、相手国に対して様々な規制を課している。米国は、「軍民融合戦略に関わる中国籍研究者の入国禁止」、「中国からの留学生などのビザ短縮」、「半導体・AI・量子分野の研究者の審査強化」、「大学・研究機関に対する『外国影響透明化』の義務化」、「中国軍関連大学(国防七校)出身者の入国拒否」などの強化策を矢継ぎ早に打ち出した。

 中国も米国に対抗して、2021年、外国が差別的な制限措置を講じ、内政に干渉した場合は対抗措置をとるとした「反外国制裁法」を制定した。2026年、中国は米国の二次制裁に対抗する措置を発表したが、日本に対しても、日本企業40社を輸出規制対象に追加した。日本産の海産物、レアアース、観光、文化交流なども制限対象となった日本は、今後も、より厳しい制裁を受ける可能性がある。


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