経済安全保障の基礎知識(第2回)
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執筆者:藤谷 昌敏
1.はじめに
経済安全保障の基礎知識(第1回)では、経済安全保障の定義と日本の経済安全保障のポイントについて述べた。2回目の今回は、なぜ各国が経済安全保障に力をいれるようになったのか、その背景について説明したい。その要因は、主に「グローバリゼーション」、「技術革新の進展」、「新興市場の台頭」、「サプライチェーンの変革」、「持続可能性への注力」、「金融市場の複雑化」、「人口動態の変化」など7点に集約される。ここで簡単に整理してみよう。
2.経済安全保障強化の背景
(1)グローバリゼーション
「グローバリゼーション」(globalization)とは、社会的あるいは経済的な関係が、それまでの国家や地域などの境界を越えて、地球規模に拡大してさまざまな変化を引き起こす現象のことを言う。特に20世紀以降、国境を越えた経済的な相互依存が急速に進み、国、企業、人のつながりが深まり、商品やサービス、資本、技術が自由に移動するようになった。反面、特定の国の一方的な意思や政治目的により、商品や資材などの自由な移動が阻害される現象が起こるようになった。
(2)技術革新の進展
インターネット上でデジタル化された財・サービスなどの流通が加速する中、こうしたデジタル経済をベースにした新しい技術関心が近年急速に進展し、経済社会に大きな変化を引き起こしつつある。これらは、IoT、ビッグデータ、AI、ロボットなどの新規技術であり、第4次産業革命とも呼ばれている。
(3)新興市場の台頭
新興アジアとは、日本を除く東アジア・南アジアの16カ国・地域を指している。この中には、最も球速に成長を遂げている中国とインドが含まれる。中でも中国の経済発展は目を見張るものがあった。当初は2018年頃には米国を抜いて世界第1位の経済大国となるとの予測があったが、ここに来て中国は不動産不況、コロナ後の景気回復の失敗、1,800兆円を超える地方政府の債務などにより、財政破綻リスクが高まっている。
(4)サプライチェーンの変革
グローバリゼーションと技術進化に伴い、生産プロセスやサプライチェーンがより複雑で分散化された。そのため、国際的な協力体制が重要となり、製品やサービスの生産が複数の国で連携して行われるようになった。国内の法改正・海外の規制動向を注視しつつ、製造拠点の国内回帰を含め、サプライチェーンのあるべき姿を包括的にデザインし直す必要性が高まっている。
(5)持続可能性への注力
持続可能性(sustainability)とは、将来にわたって現在の社会の機能を継続していくことができるシステムやプロセスのことである。持続可能性の追求は、科学的研究によって知られていることを、人々が未来に望むことを追求する応用に結びつけることを含む。人間活動、特に文明の利器を用いた活動が、将来にわたって持続できるかどうかを表す概念であり、エコロジー、経済、政治、文化の4つの分野を含むものとされる。
(6)金融市場の複雑化
金融市場が複雑化し、デリバティブ取引や仮想通貨の登場などが経済に新たな影響を与えている。実体経済は物理的な経済活動のスピードで動いているが、資本市場ではデジタル化によってマネーが瞬時に移動し、乖離が広がっている。デジタル技術の進展により、金融と非金融の境界があいまいになり、規制の枠組みやルールづくりが求められている。
(7)人口動態の変化
世界中で人口構成が変化しており、高齢化社会の進展や若年層の人口減少が一部の地域で大きな影響を及ぼしつつある。これに対応するためには、柔軟性、イノベーション、国際的な協力が求められ、持続可能な発展を目指す必要がある。経済政策の立案において、人口動態の変化を考慮した戦略的なアプローチが求められている。


