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インテリジェンス基礎理論(第2回)

  • 19 時間前
  • 読了時間: 3分

執筆者:上田 篤盛


情報活動はどのように意思決定を支えるのか


インテリジェンスは「知識」であり「活動」でもある

 前回は、インテリジェンスとは「判断や行動に役立つ知識」であると説明した。しかし、インテリジェンスという言葉は、知識だけを意味するものではない。

 CIAの元情報分析官シャーマン・ケントは、インテリジェンスとは「知識であり、活動であり、組織である」と定義している。つまり、インテリジェンスには、意思決定に役立つ知識という意味のほかに、それを生み出す情報活動、そして情報活動を担う情報組織という意味がある。

 今回は、このうち情報活動について解説する。

 情報活動は、大きく積極的情報活動消極的情報活動に区分される。消極的情報活動とは、組織や情報を守る活動であり、防諜(カウンターインテリジェンス)がその代表例である。一方、積極的情報活動には、情報を収集・分析してインテリジェンスを作成する「通常の情報活動」と、相手に影響を及ぼす秘密工作(カバート・アクション)が含まれる。

 国家の情報機関では、これらはいずれも重要な任務である。しかし、本連載では企業経営への応用を目的としていることから、本稿では通常の情報活動を中心に取り上げる。



情報活動は意思決定を支える

 最近のニュースから考えてみよう。

7月末から8月初めにかけて、外国為替市場では1ドル=163円台まで円安が進んでいた円相場が、155円台まで円高となった。これまで多くの企業は、円安を背景に米国市場への投資や生産体制を強化し、米国市場への依存を高めてきた。

 そこで始まるのが情報活動である。

 まず、円相場が現在どの水準にあり、過去と比較してどの程度の変動なのかという事実を把握する。次に、円高が生じた要因について、日米の金融政策や景気動向、為替市場の変化などを分析し、その背景を明らかにする。さらに、今後の為替相場がどのように推移するのかを予測し、自社の売上、利益、調達、生産体制などにどのような影響を及ぼすのかを評価する。

 このように、情報を収集し、事実・背景・予測・影響という視点から分析し、経営者の意思決定に役立つ知識へ高める活動が、ここでいう情報活動なのである。



情報活動で最も注意すべきこと―インテリジェンスの政治化

 情報活動で最も注意しなければならないのが、インテリジェンスの政治化である。

 インテリジェンスの目的は、経営者や政策決定者に都合のよい結論を示すことではない。事実を客観的に分析し、リスクや将来の見通しを示して、より良い意思決定を支えることにある。

 しかし現実には、経営者が「円高は一時的だ」「米国市場は今後も拡大する」と考えていると、情報担当者は無意識のうちに、その考えを裏付ける情報ばかりを集め、反対の情報を軽視してしまうことがある。

 逆に、経営者の側も、自らの考えに合う分析だけを採用し、都合の悪い分析を退けることがある。

 このような状態になると、インテリジェンスは意思決定を支える知識ではなく、すでに決めた結論を正当化する材料へと変質してしまう。これが「インテリジェンスの政治化」である。

 2003年のイラク戦争では、「イラクは大量破壊兵器を保有している」という政策判断を補強する分析が優先され、その後、大量破壊兵器は発見されなかった。この事例は、分析が政策に従属した代表例とされている。

 企業でも同様である。情報担当者は経営者に迎合せず、経営者も耳の痛い分析に耳を傾ける姿勢が求められる。情報活動とは、結論を正当化するための分析ではない。客観的な分析に基づいて、より良い意思決定を支える活動なのである。                                     (つづく)






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