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インテリジェンス基礎理論(第4回)

11 分前
読了時間: 3分

執筆者:上田 篤盛


情報源をどう使い分けるか―情報源の特性と組み合わせ



情報源にはそれぞれ長所と限界がある


 情報収集は、まず「何を知る必要があるのか」という情報要求があり、それに応じて必要な情報源を選ぶことから始まる。


 国家のインテリジェンスでは、情報源を大きく公然情報源と非公然情報源に分ける。公然情報源とは、新聞、テレビ、政府や企業の発表、統計、書籍、論文、インターネット、SNSなど、一般に入手できる情報源である。これらの公開情報を収集する活動をOSINT(オシント:公開情報)という。

 一方、非公然情報の収集には、人を通じて情報を得るHUMINT(ヒューミント:人的情報)と、技術的手段を用いるものがある。後者には、通信や電波を捉えるSIGINT(シギント:信号情報)、偵察衛星などによるIMINT(イミント:画像情報)、対象の物理的特徴などを計測するMASINT(マシント:計測・特徴情報)などがある。


 HUMINTには、人から情報を得る「聞き込み」のほか、自らの目で対象を確認する「観察」も含まれる。軍事では、スパイからの情報だけでなく、斥候による敵情観察もHUMINTである。


 企業の情報活動では、OSINTが中心となる。展示会で公開された製品を見ることはOSINTであるが、同じ展示会でも、身分や目的を偽って関係者に接触し、通常は得られない情報を引き出すのであれば、HUMINTの性格を持つ。


 情報源の分類は、どこで情報を集めたかではなく、どのような情報を、どのような手段で得たかによって考える必要がある。



異なる情報源を組み合わせる

 最近のニュースから考えてみよう。

 8月、サウジアラビア西岸のヤンブー港から原油を運ぶタンカーが、攻撃を避けるため、船舶の位置情報を発信するAIS(船舶自動識別装置)を切って航行するケースが増えた。その結果、船舶追跡会社による原油積み出し量の推計に大きな差が生じた。8月3日の週について、3社がそれぞれ日量238万バレル、178万バレル、85万バレルと推計した。


 われわれは、こうした各社の公表データをOSINTとして利用できる。しかし、その数字の基礎となるAIS情報が途絶えれば、推計にも大きな差が生じる。

そこで船舶追跡会社は、船舶が再びAISに現れるのを追跡するとともに、衛星データで船舶の動きを照合し、情報の空白を埋めようとした。


 つまり、情報源にはそれぞれ長所と限界があり、異なる情報源を組み合わせることによって、事実の全体像に近づくことができるのである。



情報源を使う際の留意事項

 情報源を使う際には、いくつか注意すべきことがある。

 第一は、それぞれの情報源の特性を理解し、複数の情報源を組み合わせることである。よく「OSINTから必要な情報の90%を得られる」といわる。しかし、相手が秘匿している意図や計画まで把握するためには、OSINTだけでは困難であり、HUMINTなど性格の異なる情報源が必要になる。


 第二は、できるだけ第一次情報源に接することである。政府の統計や公表資料、企業の決算資料、本人の発言など、第三者による要約や解釈を介さない情報源に当たることが重要である。情報は、人から人へ伝わる過程で要約され、選択され、ときには意味が変わる。新聞記事などについても、可能な限り引用元や根拠となった資料に直接遡って確認することが望ましい。


 第三は、情報源を固定的に評価しないことである。信頼できる情報源であっても、いつ、どこで、どのような状況で得られた情報なのかによって、その価値は変わる。自分の目で見た情報も同じである。観察したこと自体は事実であっても、それが全体を表しているとは限らない。


 情報要求に応じて情報源を選び、それぞれの特性と限界を踏まえて組み合わせることが重要なのである。                                      (つづく)






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